RFIDシステムを導入する際、最も注意したいのが現場に存在する金属の影響による読み取りり率の低下です。金属が多用されている現場環境での電波の特性や挙動を理解し、適切な対策を講じることが、安定したシステム運用の第一歩となります。
金属環境下での電波の挙動
RFIDシステムは主にHF帯(13.56MHz)やUHF帯(920MHz)の周波数帯を使用します。長距離通信が特長のUHF帯は金属による反射波が生じやすく、タグから放射される応答波を反射波が打ち消してしまうため、金属が多用されている環境では読み取りり率が大きく低下します。特に読み取りりが困難な場所は金属の表面です。金属表面上にタグを取り付ける場合には金属の影響を低減させるために金属面から離すスペーサーや金属上での使用を前提とした特殊構造のタグが必要となります。
干渉が発生するメカニズム
金属による干渉は実際の現場では様々な形で発生します。最も典型的なのは金属製品がリーダーとタグの間に存在する場合の直接的な電波の遮断です。この場合、電波が金属を透過できないため、通信が完全に遮断されます。工場や倉庫の金属製のラックや床下に隠れている鉄板なども反射波を発生させる要因となるため、遠方にある金属物や直接は発見困難な金属物の干渉も考慮する必要があります。
さらに、金属がタグに近接することでアンテナの特性が変化し、共振周波数がずれる近接効果も発生します。これにより、タグの応答感度が低下し、読み取り距離が短くなったり、最悪の場合は読み取り不能になったりします。