医療現場における物品管理は、医療の質と経営効率の両面に大きな影響を与える重要な業務です。この章では、基本的な概念から実務上の要点まで詳しく解説していきます。
物品管理の定義と範囲
病院における物品管理とは、医薬品、医療機器、診療材料など、医療に関わる物品の調達から保管、供給、使用、廃棄までの一連のプロセスを適切に管理することを指します。具体的な対象物品には、注射器や包帯などの消耗品、手術器具などの再利用機器、医薬品、検査機器など多岐にわたります。これらの物品は、診療報酬の算定や医療安全の観点からも、適切な管理が法令で定められています。医療機関の規模や診療科目によって管理すべき物品の種類や数量は異なりますが、すべての医療機関で徹底した管理体制の構築が求められています。
物品管理が病院経営に与える影響
医療材料費は、病院経営において人件費に次ぐ大きな支出項目です。2024年度病院経営定期調査によると、医薬品費と合算された「医薬品診療材料費」は、総支出の約30%を占めています。そのため、物品の適切な管理は、過剰在庫による保管コストの増加や期限切れによる廃棄損失の抑制につながり、病院経営の効率化に直結します。
出展:2024年度 病院経営定期調査 概要版 -最終報告(集計結果)-
物品管理における法的要件と基準
病院における物品管理は、医薬品医療機器等法(薬機法)など、複数の法令による規制を受けています。特に医療機器の保守点検や医薬品の品質管理については、具体的な基準が定められており、定期的な点検と記録の保管が義務付けられています。
医療安全管理体制の確保という観点からも、適切な物品管理体制の構築は医療機関の重要な責務です。これらの法的要件を満たすためには、組織的な管理体制の構築と、確実な記録の保持が不可欠となります。適切な物品管理体制は、診療報酬の算定にも関わるため、病院の収益面においても重要な意味を持ちます。