在庫過多は単なる保管スペースの問題にとどまらず、企業のキャッシュフローから人件費、さらには経営判断にまで幅広く影響を及ぼします。ここでは在庫過多によって生じるリスクとデメリットを紹介します。
1.キャッシュフローの悪化と資金繰りへの影響
在庫は購入時に支出を伴う資産ですが、販売されるまで現金化できません。在庫過多の状態では商品の生産や仕入れに多くの費用をかけたにもかかわらず、十分な販売収益が生じていないため、事業の収支が悪化する可能性があります。
現金で100万円を保有している場合と100万円分の在庫を持っている場合では、同じ金額でも使える資金に大きな差があることがわかります。在庫として資金が滞留することで、他の事業活動への投資や運転資金が不足し、最悪の場合は経営悪化から倒産リスクにつながることもあります。
2.保管コストと管理費の継続的な増大
多くの在庫を保管するには相応の倉庫スペースが必要となり、賃料や保険料などのコストが継続的に発生します。倉庫内の在庫管理を行う担当者の人件費も増加するでしょう。温度管理が必要な商品であれば空調費用も加わり、セキュリティ対策のコストも必要です。
これらの保管コストや人件費は余剰在庫がある限り発生し続けるため、企業の収益性を圧迫する要因となります。倉庫の規模や条件によりますが、たとえば月額10万円の倉庫賃料であっても、年間では120万円もの固定費が発生します。
3.不良在庫の発生と商品価値の低下
販売できずに長期間保管された在庫は、時間の経過とともに品質が劣化していきます。食品であれば賞味期限切れ、衣料品であれば色あせや型崩れ、電子機器であれば部品の経年劣化などが発生します。品質に問題が無くても、市場トレンドの変化や技術進歩によって商品価値が下がることもあるでしょう。
旧型となった商品や季節が変わって需要が無くなった商品は、大幅な値引きなど本来の価格では販売できなくなります。最終的に廃棄処分となった場合、仕入れコストだけでなく廃棄にかかる費用も発生するため、企業にとって二重の損失となります。
4.金利負担の増加による収益圧迫
材料や商品を購入する際に借り入れをしている場合、金利(借入利息)の支払いが必要です。不要な在庫を持ちすぎることで、その分の金利負担が増大します。仕入れに伴う借入額が増えることで、金利コストが膨らむため、収益性の悪化につながります。特に在庫回転率が低い企業では、長期間にわたる金利負担が経営を圧迫する要因となるでしょう。たとえば1000万円の在庫を金利3%で借り入れしている場合、年間30万円の金利コストが発生します。
5.作業工数と運搬負担の増加
在庫を抱える場合、保管のための作業や運搬など管理のための作業が必ず発生します。在庫の出し入れや棚卸しなどの細かな付帯作業は付加価値を生まないムダな作業といえるでしょう。在庫を持つことで作業の工数が増え、本来注力すべき業務に時間を割けなくなる可能性もあります。
従業員が在庫管理に追われることで、新商品開発や顧客対応といった付加価値の高い業務がおろそかになるケースも見られます。人的リソースの最適配分という観点からも、在庫過多は企業活動の障害となります。
6.スペースの非効率な使用と機会損失
在庫を持ちすぎれば、保管のためのスペースを非効率に使ってしまいます。倉庫代などの費用がかかるだけでなく、そのスペースを他の用途に活用できないという機会損失も発生します。たとえば、余剰在庫で倉庫が埋まると、新商品を保管するスペースが無く、ビジネスチャンスを逃してしまう可能性があります。
製造業の場合、在庫スペースを生産ラインの拡張に使うことで生産能力を向上させることができたかもしれません。スペースは有限の経営資源であり、その最適活用が企業競争力を左右します。
7.問題の潜在化による改善機会の喪失
過剰な在庫があると、生産の問題やプロセス不備が顕在化しにくく、結果として改善機会を失うことがあります。たとえば生産計画の精度が悪くても在庫があることで顧客に迷惑がかからず、改善が遅れてしまうケースがあります。商品の破損や損失に対する危機意識が薄れてしまうこともあるでしょう。
「在庫があるから大丈夫」という安心感が、業務プロセスの改善機会を奪ってしまいます。問題に気づく機会を逃してしまうことも、在庫過多がもたらす見えにくいリスクといえます。